2014年9月10日水曜日

「Minami Azabu Guide BOOK」

2012年秋のこと。

出掛けた先のパン屋さんにて
「Minami Azabu Guide BOOK」という冊子を発見。

Take free とあったのでいただいてきました。
不動産会社の出しているフリーペーパーのようです。
サブタイトルに「南麻布を満喫するスタイルマガジン」とあります。
(「ウェリス有栖川」という物件の販促用かと思われます。
NTT都市開発が売り主、三菱地所レジデンスが販売代理の物件です。)




写真がどれも綺麗ですしオールカラーでお金がかかっている印象。
さすが高級マンションの販促用ですね!

南麻布メインかなと手に取って見ましたが、隣接地域の紹介が多いような気がします。
それだけ周囲も恵まれているよ、ということなんでしょうね。
表紙も広尾商店街のお店です。

比較的広いエリアのお店が紹介されていて、読んでいて面白かったです。
散策してみたいななんて思いました。



2014年8月25日月曜日

『嬢マニュアル—18才からの「夜」のハローワーク』

『嬢マニュアル—18才からの「夜」のハローワーク』
著者:森山まなみ
平成19年5月10日 初版第3刷 (祥伝社)

※読了日 2014.07.11



嬢マニュアル―18才からの「夜」のハローワーク嬢マニュアル―18才からの「夜」のハローワーク
森山 まなみ

祥伝社 2006-05
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「キャバ嬢」ってどんなイメージ?


「キャバ嬢」と聞いてどんなイメージが浮かぶでしょうか。
私は六本木・銀座界隈にお店が集まっていて、雑誌『小悪魔ageha』(インフォレスト)のような着飾った女の子が働いているようなイメージをもっていました。


SNSでキャバ嬢を育成するようなアプリ(※)があり、以前それを数回プレイしたことがありました。髪型や小物、ドレスの様式を選んで着飾りお客様の好感度を上げNo.1キャバ嬢を目指していく……現実には及ばないでしょうが自分にはこれでも難儀でした。


※KLab提供ゲーム「恋してキャバ嬢」


職種紹介「お水図鑑」から愛されマニュアル、舞台裏まで

本書のサブタイトルに『18才からの「夜」のハローワーク』とあるように、キャバ嬢にまつわるあれこれを一から解説してありました。
職種紹介、面接から体験入店・本入店への流れを始め、できるキャバ嬢になるテクニックの数々、現役キャバ嬢へのインタビューなどが掲載されています。

軽い文体で丁寧に解説されていて、この業界に関しての知識もほとんどない自分にも理解ができました。
本書のなかで面白いと思ったのは第1章でした。


1「夜」のハローワーク〜東大生キャバ嬢から銀ホスまでの「お水図鑑」〜

キャバクラと一口にいってもその形態は様々。
「お水図鑑」というだけあってそれぞれの紹介がされています。


*大箱・小箱
*高級クラブ
*ランキャバ(ラン=ランジェリー)
*コスキャバ(コス=コスプレ)
*ネッキャバ(ネッ=ネット)
*キャバレー 
*パブスナック(指名制なし・地元密着型多し)
*パーティコンパニオン(通称「パーコン」。見栄えを揃えるために身長などに厳しい条件がある)
*ぽちゃキャバ(平均体重80kg)
*キャバ嬢からママへのステップアップ(クラブだけでなく最近はキャバクラでもママを置くお店が増えている)

キャバレーはキャバクラより働き手の年齢が高い。個人プレーのキャバクラ、チームプレーのキャバレーという印象だそう。



*ショーメン(ショーのメンバー)
大型店舗(大箱キャバクラ)ではエンターテイメントの一環としてキャバ嬢によるショーを行っているところがある。終業後に練習を重ねるハードなメンバー。

勤務時間外で練習に打ち込む、というのは驚きでした。休む時間を削ってたしかにハードそうです。


街が変われば女の子も変わる

都内でいえば新宿、渋谷、六本木、銀座、池袋。
北海道ならススキノ、大阪なら……と各地域に特に集まっている場所がありますね。
新宿は激戦区、渋谷はギャル系のゆるい雰囲気、六本木は業界人が集う華やかな世界、銀座はスマートに遊んでもらう場所。
なんとなくしか知らなかったものが本書を読んだことで、キャバクラは街の色を反映していることを知りました。



銀座ホステスとキャバ嬢の違いとは?
「スマートな飲み方ができ、遊び方を知っている美しいひと」が銀座のホステスとしてふさわしいようでした。
華やかな世界。一方で美容院代が自分もち、衣装代もバカにならないなどの苦労もあるようで。


イケてるキャバ嬢になるためにどんな要素が必要なのか

・ハードな仕事ゆえのタフさ
・心のキャパの大きさ
・相手に気づかれせずにソツのなく気配りができるか
・謙虚さをもてるか(お客様にも同僚にも)
・記憶力のよさ
・頭の回転のはやさ
このあたりが必要だそうです。項目だけ見るとキャバ嬢に限らず「できる人」になるのに必要そうです。

キャバ嬢の個人プレーだけでなく、スタッフとの連携も大事でしょう。
同僚であるほかのキャバ嬢との関係も、ライバル意識と仲間意識をもちつつうまくやっていけるのがベストなんでしょうね。




読み終えて

 易しい文章で書かれていて手軽に読めました。
夜の世界に関わるわけではなくても、こんな世界もあるんだと読むのもいいのではないでしょうか。






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2014年7月8日火曜日

フリーペーパー「ココカラ」と「FREE AWAJI BOOK 8890」を読んでみた。

フリーペーパー「ココカラ」と「FREE AWAJI BOOK 8890」。

イベント会場で配布されていたのを入手。
どちらも初めて目にしました。





ざっくりした地域密着型フリーペーパー「ココカラ」
偶数月発行のフリーペーパーです。
フリーペーパー版に掲載しきれない情報もWebマガジンで楽しめるそうです。

キャッチコピーは
「ここからはじまる ここからひろがる
おもしろいのがあたらしい ざっくりこのへんフリーペーパー」。
発行:ココカラ編集部



都内各地で絶賛配布中!新しいフリーペーパーココカラ







入手できる場所は「ココカラ」Web版で確認できます。

フリーペーパーココカラは現在、五反田、目黒、恵比寿、代官山、中目黒、広尾、西小山、武蔵小山、戸越など各地域の飲食店やコンビニエンスストアなどに設置させていただいています。
(引用元) http://www.cocokala.jp/

サイト内にあるマップでも確認できますし、設置店の紹介もされていました。
「ココカラ」は初見ですが、設置店紹介のなかにたまに行くお店がいくつかあり今まで見逃していたことを知りました。




今回読んだのは2冊です。どちらもA4サイズ、表紙含めて12ページでした。
・NO.07 April 2014
「ひみつ道具の工場、ここにあります。」
 おもしろいもの、あれこれつくる ざっくりこのへん「町工場」のあたらしいカタチ
・NO.08 June 2014 
「やっぱりバスが好き!」
 知ってるようで、そんなに知らない バスのおもしろいとこ、教えます


NO.07
連載「恵比寿な人たち」第3回で居酒屋久美のご主人が戦争の記憶と戦後の復興から現在のことを語っていらっしゃいます。
恵比寿2丁目の通りなど普段の何気なく歩いていた場所に焼夷弾が……なんてのを知ると遠くに感じていたものが急に迫ってきたようでぞくりとしました。辛い体験であったと思いますが貴重なお話です。


ちなみにこの連載は「ココカラ」と恵比寿新聞の連動企画だそうです。
恵比寿の記憶を残していくアーカイブ企画、素晴らしい試みだと思います。
(自分も過去にアーカイブ活動にかかわっていたことがありましたし今も関心があります。貴重なモノを残していく、保存・収集・公開していくのが大事だと思っています)
恵比寿新聞のサイトでは「ココカラ」で書き切れなかった取材内容も掲載されています。
写真も豊富でした。


恵比寿新聞 | 第三回 恵比寿な人たち 居酒屋久美 岡安松男さん「居酒屋久美物語」









NO.08
バス特集は運転席の操作板などの配置説明、バス豆知識などマニアックなところが面白かったです。トミカなどのバス写真が散りばめられているのも遊び心があって楽しくなってきます。

連載「恵比寿な人たち」第4回では7月下旬の「全恵比寿駅前盆踊り」について恵比寿地区町会連合会会長の方がインタビューを受けています。
恵比寿の盆踊りの曲が面白い、盆踊りもアツい!と話題になっていますね。オリジナル曲「恵比寿音頭」「YES,YES,EBISU」「HEY Mr.EBISU」は知っていました。しかし昨年新曲が発表されていたとは!!「恵比寿ラビアンローズ」という曲だそうです。
戦後、恵比寿の活気を呼び戻すべくはじまり復興のシンボルとして守られ続けたこのお祭り。現在も毎年6万人超の来場者があるそうです。祭りの裏舞台を垣間みられるこの記事もいいですね。





淡路町に特化した情報誌「FREE AWAJI BOOK 8890」


「AWAJI」というので兵庫県淡路地方かと思いました。が読んでみて勘違いに気づきました。淡路は淡路でも、千代田区神田にある淡路町(あわじちょう)のことでした。

神田淡路町という地名は淡路坂からきていると言います。
(淡路坂といえばJR中央線の神田〜御茶ノ水の線路に沿っていますね。電車を左手に眺めながらよく神田へ向かっていたな……)
淡路坂は江戸期に坂の近くに鈴木淡路守の屋敷があったことに由来するとのこと。
また淡路坂は一口坂(いもあらいざか)、大坂、相生坂(あいおいざか)とも呼ばれていたそうで、こちらは坂上東側にあった太田姫稲荷神社の別称にちなんだ名称などのようです。


坂上東側には太田姫稲荷神社がありましたが、鉄道線路拡幅のため昭和6年に移転し、現在は神田駿河台一丁目にあります。この神社は、太田道灌が娘の疱瘡 (いもあらい)の治癒を祈願して、山城国(京都府)一口の里の稲荷を勧請して建立し、一口稲荷と呼んだと伝えられています。このことから、この坂には一口坂の別名もあります。
(引用元) http://www.kanko-chiyoda.jp/tabid/613/Default.aspx

前置きが長くなりましたが、この神田淡路町を取り上げたフリーペーパーが「FREE AWAJI BOOK 8890」です。
発行:一般社団法人淡路エリアマネジメント
編集:グッドモーニングス株式会社 水代 優



地域情報誌|一般社団法人 淡路エリアマネジメント


PDFでバックナンバーも読めます




今回手に取ったのは
2014 June No.6 「特集:美味しい和菓子をいただきます」です。
B6サイズで表紙含め16ページでした。





「御菓子処 さゝま」の記事を読んで、近いうちに人気の「松葉最中」を買い求めに出掛けたくなりました。丁寧に作られたこしあんを想像するだけでたまりません。

大量生産大量消費が当たり前の時代。頑なにデパートなどへの出店を拒み、通信販売もしていない。「欲しい人には買いに来ていただく」スタイルを貫いている。老舗ならではの頑固さが理由ではない。
(中略)
「さゝまのお菓子は美味しいと言っていただけますが、当たり前なんです。昔ながらの本物にこだわった製法を守り続けているんですから」
(引用元) 本誌p.5

品質に妥協せずに昔ながらの手法を守り丁寧にされる仕事。
ぜひとも足を運んでみたくなります。







なお、編集をされている水代氏は町おこしなどを手がけている方のようです。


人気の町おこしの専門家が明かす「必敗パターン」とは ~グッドモーニングス代表・水代優氏インタビュー  | 磯山友幸「経済ニュースの裏側」 | 現代ビジネス [講談社]





この記事でも神田淡路町のことが触れてありました。
「FREE AWAJI BOOK 8890」でもPRされていた「ワテラス」。再開発事業で建てられた複合ビルだそう。地域のコミュニティースペースとしてさまざまなイベントが企画されているそうです。

 「粋」がテーマなんですが、自分で「粋」と言うと粋じゃないので、"Essence of Japanese"っていうシリーズにするつもりです。京都の香道や茶道、俳句、和菓子、蕎麦のほか、ぽち袋の折り方や、字をきれいに書けるようになるプログラムなどを考えています。丸の内で溜め込んだノウハウを神田に生かすわけです。年間24本ぐらいの企画をやる予定です。
 さらにコミュニティ誌の編集発行も引き受けました。江戸の香りを残す神田淡路町の昔からの住民と、ワテラスに住む新住民が溶け合い、新たなコミュニティが出来上がっていくお手伝いをしたいと思っています。
(引用元) http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35199?page=5

冊子とともに地域の今後が気になりますね。

2014年6月23日月曜日

2014年に開催、妖怪関係の展覧会まとめ

自分が行きたい展示を中心にまとめております。
毎年多くの妖怪・民俗学関係の展示があります。
あくまで一部をピックアップしています。

関東

河鍋暁斎記念美術館 (埼玉県蕨市南町)
2014年5月2日(金)〜2014年6月25日(水)
企画展 妖怪図-奇々怪々あやしの世界-展



Café & Meal MUJI 新宿 (新宿ピカデリーB1F)
2014年6月6日(金)〜7月23日(水)
石黒亜矢子の作品展「化け猫と幻獣」

京極夏彦氏の装幀画などを手がけるイラストレーターの展示。
※カフェスペースでの展示のためドリンクまたはフードのオーダーが必要だそうです。



浮世絵 太田記念美術館 (渋谷区神宮前)
2014年7月1日(火)〜9月25日(木)
特別展「江戸妖怪大図鑑」


太田記念美術館 特別展「江戸妖怪大図鑑」






※第1部〜3部で展示替え
第1部【化け物】7/1(火)〜7/27(日)
第2部【幽霊】8/1(金)〜8/26(火)
第3部【妖術使い】8/30(土)〜9/25(木)

展示替えが3回!
第1部はもうすぐです、楽しみです。



柏市郷土資料展示室 (千葉県柏市大島田)
2014年5月31日(土)〜2014年9月7日(日)
第17回 柏の歴史企画展「幽霊とものゝけ ~柏の怖い絵見に来ませんか~」 


第17回柏の歴史企画展 幽霊とものゝけ ~柏の怖い絵見に来ませんか~ - 柏市役所







中部・東海

名古屋市博物館 (名古屋市瑞穂区)
2014年5月21日(水)〜7月13日(日)
特別展「幽霊・妖怪画展大全集」


名古屋市博物館 特別展「幽霊・妖怪画展大全集」






以前福岡で展示があった際に図録やグッズを取り寄せました。
全国を巡回展示していますね。
「YKI48総選挙」も面白いですね。
みなさまイチオシのお気に入り妖怪はどれでしょう?




岐阜県博物館 (岐阜県関市小屋名)
7月4日(金)~8月31日(日)
特別展 奇なるものへの挑戦 明治大正/異端の科学


岐阜県博物館ウェブサイト|GIFU PREFECTURAL MUSEUM






千里眼・念写・催眠術。狐憑き・神おろし。
明治大正期といえば近代化により科学技術への関心が高まりつつも、古来よりの信仰や不可思議なものへの関心もあった頃。
この展示では福来友吉や田中守平の足跡を辿りつつ近代について迫るとのこと。

岐阜県博物館は子どもの頃によく出掛けていました。
妖怪の展示を調べていたら懐かしい館名に出会いうれしくなりました。




高浜市やきものの里かわら美術館 (愛知県高浜市青木町)
平成26年7月19日(土)~9月15日(月)
鬼と妖怪の造形(かたち)―水木しげるの作品とともに―
※同時開催 水木しげるの戦争と新聞報道

開催中の展覧会| 展覧会のご案内 | 高浜市やきものの里 かわら美術館





鬼瓦や郷土の玩具にみる妖怪の造形というところに興味をひかれます。
香川雅信氏(兵庫県立歴史博物館 主査・学芸員)の講演「妖怪の造形」も面白そうです。



北陸

石川近代文学館 (金沢市広坂)
2014年4月19日(土)〜8月24日(日)
妖怪えほん原画展

※7月5日(土)京極夏彦氏と東雅夫氏のトークイベントあり


東北

山寺芭蕉記念館 (山形市大字山寺字南院)
2014年7月18日(金)〜8月25日(月)
企画展 妖怪の文学・美術

現時点で展示品の詳細はわかりません。
2010年に同館で「もののけでみる文学・美術」展が開催された際の記事はみつかりました。

妖怪の図鑑や掛け軸など25点を展示。中国の妖怪「金毛九尾の狐(きつね)」の怨念(おんねん)が石になったという「殺生石」について詠んだ松尾芭蕉の俳句、鬼を手下にした役行者(えんのぎょうじゃ)を題材にした掛け軸、葛飾北斎が描いた妖怪、江戸時代の妖怪画集「今昔百鬼拾遺」など、人々の生活に潜むこの世のものではないものを表現した文学を紹介している。
(引用元) http://www.47news.jp/localnews/odekake/2010/08/post-20100819001220.html


こうした切り口もまた興味があります。



関西

大阪市立美術館 (大阪市天王寺区茶臼山町)
2014年6月24日(火)~7月6日(日)、7月19日(土)~8月31日(日)
コレクション展 江戸の版本と百鬼夜行絵巻



中国地方

耕三寺博物館 仏教美術展示金剛館 (尾道市瀬戸田町)
2014年5月31日(土)〜8月31日(日)
夏季企画展 百鬼夜行の世界


耕三寺博物館 仏教美術展示 金剛館









*終了*

千葉県立中央博物館 本館 (千葉市中央区青葉町)
2014年5月10日(土)〜 6月15日(日)
トピックス展「もののけ来るぞ! 河童」

河童関係の史料・絵図のほか県内河童情報マップを作成し展示してあったそうです。




2014年6月21日土曜日

『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』

『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』
大沢在昌・石田衣良・今野 敏・柴田よしき・京極夏彦・逢坂 剛・東野圭吾 著
解説:西上心太
原作:秋本治
監修:日本推理作家協会
2007.5.30 第1刷 (集英社)

※読了日 2009/08/25



小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所
秋本 治 日本推理作家協会

集英社 2007-05-24
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「こち亀」30周年記念作品

長寿漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』 (秋本治・集英社)
2007年、同作品の連載30周年記念および日本推理作家協会設立60周年を記念し連載されたものが単行本化したのが『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』です。

実写ドラマ化でも話題(?)になっていた「こち亀」。
その新たな可能性を秘めた、この作家陣による小説化!

日本推理作家協会所属の小説家7名が寄稿しています。
大沢在昌、逢坂剛、今野敏、東野圭吾、石田衣良、京極夏彦、柴田よしき。
豪華ですね。


ギャグ漫画とミステリー、各作品とのコラボレーション

「こち亀」の世界に、各作家の作品世界を持ち込んでいます。

大沢在昌「幼な馴染み」……『新宿鮫』シリーズ
逢坂剛「決闘、二対三!の巻」……御茶ノ水警察署シリーズ
今野敏「キング・タイガー」……コラボなし
東野圭吾「目指せ乱歩賞!」……コラボなし
石田衣良「池袋⇔亀有エクスプレス」……『池袋ウエストゲートパーク』シリーズ
京極夏彦「ぬらりひょんの褌」……『どすこい』南極夏彦
柴田よしき「一杯の賭け蕎麦」……花咲慎一郎シリーズ



7作品のなかで今野敏、東野圭吾、京極夏彦作品が面白かったです。

今野敏「キング・タイガー」
プラモデルの話、両さんの趣味と相まっていい設定だと思いました。
両さんの登場は少ないけれどその登場がぐっときます。


東野圭吾「目指せ乱歩賞!」
ハチャメチャな両さんらしさがよく出ています。
タイトル通り、両さんが乱歩賞を目指して創作に明け暮れます。




京極夏彦「ぬらりひょんの褌」
南極さんに驚きました。
(本作を読んだ当時)巷説シリーズしか読んでいませんでした。いろんなものを書いてらっしゃるのですね。
コラボ作で双方の世界観が違和感なく混ざり合っています!妖怪!!
巧みですね。
「京極堂」もちらりと。


どすこい(仮)どすこい(仮)
京極 夏彦

集英社 2000-02
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装丁は黒地に白と赤と灰色の文字で「ミステリー」という雰囲気を醸しだしているようです。どこかおどろおどろしい字体にも思えます。

異色とも思えるコラボレーション。
読んでみてこういう楽しみ方は好きかも、と思わされました。
「こち亀」ファンも作家陣のファンの方もにやりとする作品ではないでしょうか。

実写ドラマ化については知りませんが漫画とアニメは昔少し目にしたことがあります。
休載なしで30年以上の連載……すごい作家であり、作品であります。


2014年6月15日日曜日

『七つの黒い夢』

『七つの黒い夢』
乙一・恩田陸・北村薫・誉田哲也・西澤保彦・桜坂洋・岩井志麻子
2007.1.15 9刷(新潮文庫)

※読了日 2009/02/21

七つの黒い夢 (新潮文庫)七つの黒い夢 (新潮文庫)
乙一 恩田 陸 北村 薫 誉田 哲也 西澤 保彦 桜坂 洋 岩井 志麻子

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ダークファンタジー

7人の作家によるアンソロジー。
背表紙には「静かな恐怖を湛えた」、「ダークファンタジー」とうたってあります。

日常にある違和感や、ささやかながらもどこか不可思議な事象。そんなものが重なって、いつしか奇妙な事態に巻き込まれていく。そんな内容ですかね。


「夢」は個人的にいまだに関心冷めやらぬテーマです。
タイトルに惹かれて本作を手にとった次第です。





乙一「この子の絵は未完成」

気になりました。
<絵>や<美術>なんてテーマはいつもとらわれてばかりですね~。
今回はそれにあわせ、「未完成」という表現が気になりました。母親から息子をみての表現です。

息子を心配する面と、自分(たち)が変な目で見られたら困るという世間体。
愛情のもつ言い切れない……なんていうか煩わしさと思いやりと。なんだかままならない感情が自分のなかに残りました。



恩田陸の「赤い毬」

好きです。
不思議な話。でも怖くはありませんでした。転がってゆく鮮やかな赤い毬……毬に導かれる縁。あたまにイメージがわき、創作意欲を掻き立てられました。



2014年6月10日火曜日

『ハチミツとクローバー film story』

『ハチミツとクローバー film story』
羽海野チカ原作 落合ゆかり著
2006.8.1 第2刷 (集英社)

読了日 2009/08/04



ハチミツとクローバーfilm story (コバルト文庫)ハチミツとクローバーfilm story (コバルト文庫)
落合 ゆかり 羽海野 チカ

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原作・羽海野チカ
羽海野さんの原作漫画『ハチミツとクローバー』は本当に好きな作品です。
ノイタミナ枠で放送されていたアニメ版の雰囲気もよかったですね。スガシカオさんの曲がよく使われてた記憶。たしか夏の夜中にやってましたよね。


ハチミツとクローバー








放送時、私も大学生でした。
一人暮らしをはじめてから深夜枠のアニメを観るようになりました。
実家では21時以降のテレビはほぼ観られませんでした。深夜にアニメがやっているなんてびっくりでした。ハチクロに目を奪われたな……。


それにしても美大って面白そうです。


本書は映画版のノベライズです

映画はまだ観ていません。
ふらりと入った古書店で、本書を発見!
散りばめられた映画のシーンをみつつ、ストーリーを追います。



映画『ハチミツとクローバー』公式サイト









監督・脚本:高田雅博
キャスト
竹本 裕太:桜井翔
花本 はぐみ:蒼井優
真山 巧:加瀬亮
森田 忍:伊勢谷友介
山田 あゆみ:関めぐみ 
花本 修司:堺雅人
原田 理花:西田尚美  ほか



ストーリーは映画のためにぎゅっとまとめられ、設定も結構変わっているんですね。
野宮さんがいない、勅使河原さんも……。

竹本くんの自分探しも……なんか、ね。
かなーり、ひっそりしたものになっているんですね。

映画では「海」へ行く。原作で遂に実現しなかった、その計画が……映画で果たされた…。はぐちゃん、貝殻拾ってないみたいですけれど。

伊勢谷友介さんの森田の表情はすごいです。
本書の静止画のみが頼りですがなかなかイメージにハマってる気がします。
ただほとんどテレビや映画等に触れないのでいかんせん声色がわかりかねます。
声はキャラクターと合っているのか謎です。原作ではシリアスさとコミカルさ、突拍子のなさとあふれる才能と振れ幅の大きい人物像ですがどう演じられていたのでしょう。

映画の真山は原作より危険人物になってるようです。
理花さん、逃げてッ!と叫ばずにはいられません。


原作と映画は別もの


原作贔屓ですかね。
少女漫画は心情描写が多いので実写化は難しいように思います。
羽海野作品は言葉の選び方にも魅力があると思いますし、雰囲気も味わえるものだと感じています。アニメはともかく実写は……原作好きとしては別物と割り切って観た方が怪我が少ないように思えてしまいました。


今回のはノベライズなので、実際に映画観てみたらまた感想違うかもしれませんね。


なんにせよ大学時代に戻りたーーい!
青春したい!
と「青春スーツ」を身に纏い直したくなる気がします。



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『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』

『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』
城 繁幸(じょう しげゆき)
2006.9.20 初版第1刷 (光文社)

読了日 2009/08/12


若者はなぜ3年で辞めるのか?~年功序列が奪う日本の未来~ (光文社新書)若者はなぜ3年で辞めるのか?~年功序列が奪う日本の未来~ (光文社新書)
城 繁幸

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「年功序列」と「成果主義」

年功序列は終わったと言われても、つい定期昇給があることを前提として今後の人生を考えてしまう……そんな思い込みは、社会人にも就活を迎える学生にも見られる。

「年功序列」というレールの崩壊。それにより、「若いうち我慢すればやがて…」というフレーズは意味をなくし、未来のポストを前提とした多くの働きの労は報われない。

能力、年齢制限という壁、「年功序列」の光と影、日本の「成果主義」の問題、若者に回るツケ。人件費の抑制(派遣社員やパートへの依存・新規雇用の縮小)により老いる企業。(→ノウハウの蓄積、継承が滞る)

そんな問題や、社会構造などに警鐘を鳴らしつつ、わかりやすく解説している。
(2006年に出版されたものではあるが今も十分に活きている内容だと思う。)


自分自身の働く理由は?
年功序列と終身雇用が大前提で、若いうちは年長者のために酷使され、自分が中高年になってからようやく恩恵に預かるシステム。それはもはや見込めない世になった。
しかし現在の若年者と経営に関わる中高年ではシステムに関する認識が異なる、モデルとして描くものがかけ離れているが故に軋轢が生まれる。自分たちがかつてそうであったからと今の若年者に「滅私奉公」を求めても割に合わないと去られてしまう。

「石の上にも三年」なんて言うけれど、経験を積むためにその職場で折り合いをつけて続けていくのがいいのか、心機一転と若いうちに転職をするのがいいのか。

本書を読みながら、まずはわたし自身の「働く理由」についてもっと考えていきたいと思った。

(読了したのは23歳の誕生日を迎えた直後。
大学を卒業してはいてもまだ社会人の右も左も分からない状態だった。)

2014年5月11日日曜日

エンデ全集3 『モモ』

エンデ全集3 『モモ』
ミヒャエル・エンデ
大島かおり 訳
1996.9.5 第1刷 (岩波書店)

読了日 2009/07/25 


モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)
ミヒャエル・エンデ

岩波書店 1976-09-24
売り上げランキング : 8762

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ストーリー


街外れの廃虚に暮らしはじめた不思議な女の子、モモ。
彼女は「話を聞くこと」という素晴らしい才能をもっていました。話を聞いてもらうことで相手は自分のなかにある真実というべきものに気づいていくのです。
ジジ、ベッポと親友になります。街の人びとと貧しいながらも助け合い楽しく毎日を過ごしていました。

しかし街に「時間貯蓄銀行」の銀行員なる灰色の男たちが現れる。彼らは時間を倹約して時間銀行に貯蓄することで10年後には時間が2倍、将来的にはそれ以上に何倍もの時間が手に入ると騙ります。彼らに従い街の人たちは「時間節約」に励みはじめ、日ごと人々の暮らしが変わっていきます。

モモは灰色の男たちの正体に気づきます。
モモを危険視した男たちは彼女を懐柔しようとビビガールを贈り、それが叶わないとみるや仲間を奪っていきます。
マイスター・ホラや亀のカシオペイアの力を借り、モモは灰色の男たちに立ち向かっていきます。


表紙のタイトル上に書いてある通り。
「時間どろぼうと ぬすまれた時間を 人間にとりかえしてくれた女の子の ふしぎな物語」です。



謎掛けの答えは?


ミヒャエル・エンデ作品は小学生の頃『はてしない物語』を読みました。
続いて読んだのは『モモ』を読んだのは中学生の頃。
ふとまた読みたくなり、図書館で借りてきました。(いずれは手元に欲しい)


モモが、マイスター・ホラに投げかけられたなぞなぞ。
『モモ』を読む方、ぜひ考えてみてください。
わたしには印象的な問いでした。


ホントはまるで違うきょうだいなのに、
あなたが3人を見分けようとすると、
それぞれがたがいに瓜二つ(そっくりってこと)。
1番上のきょうだいは今、いない、
これからやっと現われる。
2番目のきょうだいもいないが、
こっちはもうおうちから出かけたあと。
3番目のちびさんだけが、
ここにいる。
それというのも3番目がここにいないと、
あとの二人は、なくなってしまうから。
でもその大事な3番目がいられるのは、
1番目が2番目のきょうだいに
変身してくれるため。
あなたが3番目をよく眺めようとしても、
そこに見えるのはいつも他のきょうだいだけ!
さぁ、言ってごらん、
3人はほんとうはひとりかな?
それともふたり?
それともーーーだれもいない?
さぁ、それぞれの名前をあてられるかな?
それができれば、
3人の偉大な支配者がわかったことになる。
3人は一緒に、ひとつの国をおさめている、
しかも彼らこそ、その国そのもの!
その点で彼らはみなおなじ。

この答えは物語の鍵になります。
エンデ作品はところどころ子ども心にわくわくする仕掛けがありました。
『モモ』で言えばこの謎掛けでした。



モモたちの取り戻してくれたもの



灰色の男たちに言われるがまま「時間倹約」に励む街の人々は、ひたすらに合理的、採算性を重視し無駄なものをなくしていきます。時間節約は趣味の時間、家族と過ごす時間、誠実さなど大事にしていたものを失わせていくことになります。

灰色の男たちは言葉巧みに人々の時間を奪っていきます。
でも人々はすぐに灰色の男たちの存在を忘れてしまいます。そして時間倹約およびそのための行動の数々は自分で決定したものだと思い込んでしまうのです。
灰色の男に初めて出会ったときのモモはひどい寒気に襲われます。しかしそんな彼女ですら彼らのことを忘れてしまうのでした。

街の人々が「時間倹約」のためにする行動は現代社会に通じるものでしょう。
たとえば床屋のフージーはお客さんとのおしゃべりをやめ、年老いた母親の世話をやめ施設に預けます。毎日過ごしていた女性との時間も減らし、ペットを手放し、友人と会うのも趣味もやめてしまいます。
そのほかにもいろんなパターンがあります。どれも現代社会を風刺したものに思えます。

モモと時間泥棒とのたたかいをドキドキしながら読み進めて。
そしてモモが取り返してくれたものはなんだったのか。モモが教えてくれたものはなんなのか。読み終わった時に考えさせられます。


灰色の男たちはそこかしこに


マイスター・ホラが見せてくれたもの。唯一無比の花、一人ひとりの「時間の花」。星の振子と、咲いては散り再び咲くさまざまな花。
自分自身の花は、今も咲いているだろうか。灰色の男たちの煙が混じってはいないか。

時間泥棒によって盗まれた時間は「葉巻きたばこ」にされ、燃やされ失われていく。死んでいった時間。

<モモがマイスター・ホラの<<どこにもない館>>でした、灰色男についての会話もまた示唆に富んでいます。

「あの人たちは、いったいどうしてあんなに灰色の顔をしているの?」と、
モモはめがねでむこうを眺めながらたずねました。
「死んだもので命をつないでいるからだよ。」と、
マイスター・ホラは答えました。
「おまえも知っているだろう。彼らは人間の生活時間を糧にして実存しているんだよ。
しかし、その生活時間は本当の所有主から切りはなされると、文字通り死んでしまう。
人間は一人ひとり自分の時間を持っているからね。
だから、その時間は、本当の持ち主が本当に持っている間だけ生きているんだよ。」

「時間とはすなわち生活なのです。そして生活とは、人間の心の中にあるものなのです」

灰色の男たちはそこかしこに存在しているのでしょう。
自分の心、生活、大切な時間を殺してしまわないように生きていきたいものです。


『モモ』は子どもに向けてやさしい表現で描かれていますが、大人になって読み返しても考えさせられるテーマを含んだ作品です。

2014年4月29日火曜日

『ブルースカイ』

『ブルースカイ』
桜庭一樹
2005.10.15  (早川書房)

読了日 2009/07/10


ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)
桜庭 一樹

早川書房 2005-10-07
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あらすじ

西暦1627年、魔女狩りの嵐吹き荒れるドイツ。
少女マリーは〈アンチ・キリスト〉に出会う。

西暦2022年、シンガポール。
青年ディッキーは、ゴシックの廃墟を歩く少女に、失われた存在をみる。

2007年4月、鹿児島シティ。
それは突然起こり、全てのはじまり。そしてすぐに終わる…「さよなら、せかい。」

――3つの「箱庭」、「青空」、そして「少女」をめぐる物語。
どこまでもつきまとう、黒く不吉な影。「ブルースカイ」とは?


構成について

物語の展開の手法に関しては、『私の男』に近いのかなと思った。
結末を示し、次に経緯を当事者に披露させる…その辺り。
こういう語り、好きかも。

事実や出来事のなかに呑まれ、消えようとする存在であっても、そこにはその存在のあり方があって…。ストーリー中で連続する出来事の波に「消えていく」(歴史の向こう、闇の彼方、新しい世界、存在の変化……)キャラクターにも、キャラ自身の矜示や感情、人生があって…その視点が知りたい。

歴史の教科書で一行で語られる部分、その語られぬ膨大な人生を知りたい気持ちに近いというのか。
絡みあってできた全貌が知りたい。また、知る=鎮魂だ。


まだ語られていない部分

本書はまだ語られていない部分が多くあるように思う。
SF風ではあるけれど本格的ではない気がする。モチーフは面白いのだけれど。
こと第1章のドイツ、魔女狩りに関してもっと読みたかった。

いつかどこかで補完されるのだろうか。


『ロリータ』に思うこと

『ロリータ』
ウラジーミル・ナボコフ 若島正 訳
2005.11.30発行 (新潮社)


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あらすじ

パリに生まれ、教養豊かに育ち、魅力的な容姿をもつ主人公ハンバート・ハンバート。
幼い頃、アナベルという少女との初恋で心に傷を負う。死別した彼女の面影を追いかける。
その後の別の女性との結婚に失敗し、離婚を機にアメリカへ渡った。
その下宿先で彼の運命は急速に転がりはじめる。
アナベルの面影をもつ少女ドロレス・ヘイズとの出会いによって。


今回読んだのは若島正の訳書である。
新訳である本書に対して、旧訳は大久保康夫の手により1959年に出版されている。
両者の訳の異同に妙味があると思われるのでいつか読み比べてみたい。




作者の放浪

著者自身も放浪の人生を歩んできたように思える。
時は帝政ロシア。貴族の家に生まれた著者であるところのウラジーミル・ナボコフは、ロシア革命によりドイツへ亡命。その後アメリカへ移住。『ロリータ』を発表したのは1955年だった。…センセーションを起こした本作。そして教職を辞し、スイスへ移ることとなる。

作品を出版するにあたりアメリカの出版社複数社にかけあうも断られ続けたという。

作品が著者自身に与えた影響も大きかったんだろうか。
この作品をかける著者故にそのような旅路にあったのだろうか。



『ロリータ』を読んでみて変わった印象

H・Hは提案する。

九歳から十四歳までの範囲で、その二倍も何倍も年上の魅せられた旅人に対してのみ、人間でなくニンフの(すなわち悪魔の)本性を現すような乙女が発生する」この「選ばれた生物」を「ニンフェット」と呼ぶことを。そしてその存在を激しく求める。

そんななか出会ってしまった…12歳の少女、ドロレス・ヘイズ。
…愛称ロー、またはロリータ。



「少女愛というタブーに踏み込んだためにスキャンダラスな問題作として広く知られる」
「精緻極まるパズルのような名作である」
(引用元)本書紹介文



戻れぬ欲望、堕ち行く日々。

『ロリータ』から「ロリコン」「少女偏愛」などの言葉が生まれたと聞いて、子どもの頃kら非常に淫猥な小説なのかと思っていた。そのため手に取るまでにかなり時間がかかった。
しかし読んでみて、この作品はミステリーだと感じた。

ハンバートの手記の体裁をとり、ラストも謎を残す結びである。
ロリータの死後に公開をゆるすという条件。
本当にロリータはいたのか?彼は罪を犯したのか。
解説でも明らかにはされない、読み手が読み解くことを期待している。

執拗に少女をみつめ、記す男の目線。我々の読むロリータは彼のフィルターにかかった姿でしかない。少女を不安定にさせていく元凶は彼なのに、それでもなお絡み付くような目で彼女をみつめつづける。


映画版「ロリータ」


原作を読んでから5年ほど経ちました。
たまたまHuluに映画化された「ロリータ」をみつけ鑑賞した。

『ロリータ』は2度映画化されている。

1度目はスタンリー・キューブリック監督、1962年。

ハンバート・ハンバート役:ジェームズ・メイソン
ドロレス・ヘイズ (ロリータ)役:スー・リオン
シャーロット・ヘイズ (ロリータの母親)役:シェリー・ウィンタース


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2度目はエイドリアン・ライン監督、1998年。

ハンバート・ハンバート役:ジェレミー・アイアンズ
ドロレス・ヘイズ (ロリータ)役:ドミニク・スウェイン
シャーロット・ヘイズ (ロリータの母親)役:メラニー・グリフィス

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今回観たのは1回目の映画化、キューブリック監督作の方である。

ロリータ役のスー・リオンの境遇(度重なる結婚や悲劇等)をその後に知り、なんとも言えない気分になる。

少女が原作に抱いていたよりも大きい女の子だなと思う。が、それは規制や観念上仕方ないのかと推察する。年齢的な問題、当時の検閲などから年齢設定を上げたり性描写を省いたりせざるを得なかったのだろう。

またロリータやハンバートの過去や描写についてもすべてを描くことはできなかったのだと思う。けれど映画の内容だけだと執拗な少女への想いが幾分薄れ、小悪魔的な少女にもてあそばれ恋に破れた哀れな中年男性というように映った。


2回目の映画化作品は原作に忠実なのだという。
機会があればこちらも観てみたい。


惹かれることは時として罪。
行き場のない、救われないどころか不幸のもととなって。


自分を探す物語 『浮世でランチ』

『浮世でランチ』
山崎ナオコーラ
2006.9.30 初版 (河出書房新社)

読了日 2009/12/28


浮世でランチ浮世でランチ
山崎 ナオコーラ

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あらすじ

会社情報誌を作る会社で働く私、丸山君枝。
昼休みはひとりコンビニで買ったお弁当を手に公園へ向かう。
昼休みの雑談よりも猫と食べる方が楽しい気がする…
2月のはじめに会社を辞めた。
25歳の私の手の中には…ただタイ行きのチケットだけがあった。



会社のミカミさん。
思い出のなかのクラスメートたち。
過去と現在、紡がれる物語。その旅は彼女になにをもたらすだろう。


初めて読む山崎ナオコーラ

タイトルに惹かれて…山崎ナオコーラさんの作品を初めて読みました。
文体はわりあいすんなり入ってきました。
デビュー作『人のセックスを笑うな』は評価されている恋愛小説だそう。
まだ読んでませんが、装丁の鳥はハトかな。
映画化もされているようなのでいつか比べてみたいものです。

今回読んだ作品は恋愛小説というより、自分と向き合っていく物語のように感じました。

「浮き世」という言葉に惹かれたわけなのですが、思っていたイメージとはちょっと違いました。古典に通じる「浮き世」のイメージを求め過ぎていました。


デザインについて考える 『idea アイデア』

世界のデザイン誌『idea アイデア』通巻334号
2009.5.1 (誠文堂新光社)

読了日 2009/08/20


idea ( アイデア ) 2009年 05月号 [雑誌]idea ( アイデア ) 2009年 05月号 [雑誌]

誠文堂新光社 2009-04-10
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『idea アイデア』 について

偶数月10日発行。
判型: A4変型判
定価:本体 3,333 円+税
誠文堂新光社より発売

誠文堂新光社
http://www.seibundo-shinkosha.net/products/detail.php?product_id=2053
  
idea HP
http://www.idea-mag.com/jp/publication/334.php



334号の特集


334号は、「漫画・アニメ・ライトノベル文化のデザイン 前編」をテーマとしています。

巻頭特集は、あずまきよひこ氏『よつばと!』を支える「よつばスタジオ」の仕事について取り上げています。カバー、カバー裏、帯のデザインとストーリー性が面白いと思います。作品を手にとってみたいな。

このスタジオは、作品の企画制作から広告、関連商品のデザインなどプロデュース全般を手がけているそう。出版社(編集者)と著者の間をつなぎ、作品を支える新たな存在。インタビュー記事も考え方も興味深いです。

装丁デザイン、ロゴデザインが一挙に並ぶ様は、その広さにわくわくする。漫画雑誌のマスコットキャラの由来も面白い。(少年誌6誌)

デザインって面白いなぁ。


アイデア334号ではこれまで顧みられてこなかった,漫画,アニメ,ライトノベルをめぐるデザインの流れの一端を,代表的なデザイナーたちの仕事とインタビューを通じて提示する。
(引用元)http://www.idea-mag.com/jp/publication/334.php

漫画やライトノベルのデザインが気になって2009年当時手に取った雑誌でした。
あれから5年、機会があって『よつばと!』も読むことになりました。
それで過去の書いたブログ(元ブログは閉鎖しました)を引っ張り出してきたのでした。

2014年4月28日月曜日

ミニコミ紙と熱気 『ミニコミ マニア』

『ミニコミ マニア』
春日出版編集部
2008.12.30 初版 (春日出版)


ミニコミマニアミニコミマニア
春日出版編集部

春日出版 2009-01
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わたしのなかのミニコミ欲をかきたてた一冊です。


ミニコミとはなにか


「ミニコミ」とは、最近では「リトルプレス」などとも呼ばれるようですが、要するに大手の流通を通さず、個人やサークルなどで発行している小部数の出版物を指します。既成の出版物とは違い、自由で制約のない誌面づくりができるのが、最大の魅力です。
(引用元) 『ミニコミ マニア』の《はじめに》より


数あるミニコミ誌から、53冊をピックアップ。各誌を見開きで、表紙や記事をカラーで掲載。問い合わせ先や定価、発行サイクルもわかる便利な一冊です。

個性豊かなミニコミの数々は、眺めるだけでも楽しい気分になりますね。
エネルギーに溢れた世界です。


手に取りたくて、そして新宿へ


実際に触れてみたくて出掛けてみました。
行き先はミニコミ紙など少数発行物を扱う「模索舎」(新宿)です。

ミニコミは基本的に一般書店で見かけることはありませんが、こちらにはかなりの数がそろっていました。
ミニコミとは制約の無い分、かくも自由に主張できるのか!という驚くとともに並んでいるものを眺めました。そこには活動や表現にかけるとてつもないエネルギーを感じます。

ここで出会ったミニコミから5冊ほど購入しました。


さあ自分のお気に入りを探しに、街へ出よう。本屋へ行こう。訪ねよう。



*所在地等*

模索舎
東京都新宿区新宿2ー4ー9
TEL:03-3352-3557

営業時間 :11:00~21:00
※日曜日のみ 12:00~20:00
定休日:なし
HP
http://www.mosakusha.com/voice_of_the_staff/








一夜の夢、六本木アートナイト2014 ②


六本木アートナイト2014 に出掛けてきました。

概要については前回の記事に書きました。
一夜の夢、六本木アートナイト2014 ①


今回は実際に回った展示について。





今回のテーマは「動け、カラダ!」。
パンフレットのデザインも賑やかです。



今回はコアタイムに出掛けることが難しいため、オープニング間もない時間に回りました。
4月19日(土)の10時開始のアートナイト。
12時前にはうろうろして、16時前に離れたと思います。
さすがにこれだけずらすと空いていました。


観て回った作品たち


さてここからは実際に観ることのできた作品についてです。
コアタイムを外すと、なかなかお目当ての展示は観られないなというのが正直なところでした。反面空いているので美術館の展示はゆったりと楽しめるのがいいところです。


東京ミッドタウン
  • 「のぞいてびっくり江戸絵画 科学の眼、視覚のふしぎ」展 (サントリー美術館)
  • フラワーアートアワード
  • 佐藤悠 <<ゴロゴロ六本木>>
  • 西尾美也 <<花柄/花>>
  • 八谷和彦 <<オープンスカイ:M-02J>>


国立新美術館
  • 西尾美也 <<ボタン/雨>>
  • 吉田一郎 <<おお大ちゃん>>
  • TOKYO ANIMA! 2014







八谷和彦 <<オープンスカイ:M-02J>>

『風の谷のナウシカ』に登場するメーヴェを参考に、10年ほどの歳月を費やした飛行機。
間近でみると大きさに驚きました。

子どもの頃から憧れていたナウシカの世界。
わくわくします。

ものづくりの情熱も感じます。








西尾美也 <<花柄/花>>

西尾美也の<<カラダひとつプロジェクト>>3部作のひとつ。
集めた古着から、さまざまな花柄をとりだして。

巨大なパッチワークですね。
同じモチーフの柄でもこんなに多様に描かれるものだと思うとなんだか面白くなりました。





フラワーアートアワード
ミッドタウン内のあちこちに飾られているのは薔薇の花をつかった作品たち。
ラグジュアリーで落ち着いた空気のあるミッドタウン内がさらに華やかさを増しています。








薔薇の花のつくる影もまた美しいですね。



TOKYO ANIMA! 2014
約15名もの若手アニメーション作家の作品を上映。
初回はすんなりと入れました。






西尾美也 <<ボタン/雨>>
国立新美術館の傘立てスペースの前に展示されていた作品。

西尾美也の<<カラダひとつプロジェクト>>3部作のひとつ。
集めた古着のボタンを利用した作品とのこと。

ボタンを雨に見立て、さらに傘立てスペースに飾っています。
遠目に観ると反射したボタンが煌めいていて綺麗でした。
夜間はライトアップされていたのでしょうか……?





 


吉田一郎 <<おお大ちゃん>>

徳島県で布や日用品を利用したアートを手がけるという吉田氏の作品。
20m超と紹介されていました。
新美術館のエントランスから見上げることができます、大きさに驚きます。





エントランスより見上げて




3階からみつめてみても大きい



時間がないためざっと観て回りましたが面白かったです。
来年も楽しみだな。