2014年4月29日火曜日

『ロリータ』に思うこと

『ロリータ』
ウラジーミル・ナボコフ 若島正 訳
2005.11.30発行 (新潮社)


ロリータ (新潮文庫)ロリータ (新潮文庫)
ウラジーミル ナボコフ 若島 正

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あらすじ

パリに生まれ、教養豊かに育ち、魅力的な容姿をもつ主人公ハンバート・ハンバート。
幼い頃、アナベルという少女との初恋で心に傷を負う。死別した彼女の面影を追いかける。
その後の別の女性との結婚に失敗し、離婚を機にアメリカへ渡った。
その下宿先で彼の運命は急速に転がりはじめる。
アナベルの面影をもつ少女ドロレス・ヘイズとの出会いによって。


今回読んだのは若島正の訳書である。
新訳である本書に対して、旧訳は大久保康夫の手により1959年に出版されている。
両者の訳の異同に妙味があると思われるのでいつか読み比べてみたい。




作者の放浪

著者自身も放浪の人生を歩んできたように思える。
時は帝政ロシア。貴族の家に生まれた著者であるところのウラジーミル・ナボコフは、ロシア革命によりドイツへ亡命。その後アメリカへ移住。『ロリータ』を発表したのは1955年だった。…センセーションを起こした本作。そして教職を辞し、スイスへ移ることとなる。

作品を出版するにあたりアメリカの出版社複数社にかけあうも断られ続けたという。

作品が著者自身に与えた影響も大きかったんだろうか。
この作品をかける著者故にそのような旅路にあったのだろうか。



『ロリータ』を読んでみて変わった印象

H・Hは提案する。

九歳から十四歳までの範囲で、その二倍も何倍も年上の魅せられた旅人に対してのみ、人間でなくニンフの(すなわち悪魔の)本性を現すような乙女が発生する」この「選ばれた生物」を「ニンフェット」と呼ぶことを。そしてその存在を激しく求める。

そんななか出会ってしまった…12歳の少女、ドロレス・ヘイズ。
…愛称ロー、またはロリータ。



「少女愛というタブーに踏み込んだためにスキャンダラスな問題作として広く知られる」
「精緻極まるパズルのような名作である」
(引用元)本書紹介文



戻れぬ欲望、堕ち行く日々。

『ロリータ』から「ロリコン」「少女偏愛」などの言葉が生まれたと聞いて、子どもの頃kら非常に淫猥な小説なのかと思っていた。そのため手に取るまでにかなり時間がかかった。
しかし読んでみて、この作品はミステリーだと感じた。

ハンバートの手記の体裁をとり、ラストも謎を残す結びである。
ロリータの死後に公開をゆるすという条件。
本当にロリータはいたのか?彼は罪を犯したのか。
解説でも明らかにはされない、読み手が読み解くことを期待している。

執拗に少女をみつめ、記す男の目線。我々の読むロリータは彼のフィルターにかかった姿でしかない。少女を不安定にさせていく元凶は彼なのに、それでもなお絡み付くような目で彼女をみつめつづける。


映画版「ロリータ」


原作を読んでから5年ほど経ちました。
たまたまHuluに映画化された「ロリータ」をみつけ鑑賞した。

『ロリータ』は2度映画化されている。

1度目はスタンリー・キューブリック監督、1962年。

ハンバート・ハンバート役:ジェームズ・メイソン
ドロレス・ヘイズ (ロリータ)役:スー・リオン
シャーロット・ヘイズ (ロリータの母親)役:シェリー・ウィンタース


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2度目はエイドリアン・ライン監督、1998年。

ハンバート・ハンバート役:ジェレミー・アイアンズ
ドロレス・ヘイズ (ロリータ)役:ドミニク・スウェイン
シャーロット・ヘイズ (ロリータの母親)役:メラニー・グリフィス

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今回観たのは1回目の映画化、キューブリック監督作の方である。

ロリータ役のスー・リオンの境遇(度重なる結婚や悲劇等)をその後に知り、なんとも言えない気分になる。

少女が原作に抱いていたよりも大きい女の子だなと思う。が、それは規制や観念上仕方ないのかと推察する。年齢的な問題、当時の検閲などから年齢設定を上げたり性描写を省いたりせざるを得なかったのだろう。

またロリータやハンバートの過去や描写についてもすべてを描くことはできなかったのだと思う。けれど映画の内容だけだと執拗な少女への想いが幾分薄れ、小悪魔的な少女にもてあそばれ恋に破れた哀れな中年男性というように映った。


2回目の映画化作品は原作に忠実なのだという。
機会があればこちらも観てみたい。


惹かれることは時として罪。
行き場のない、救われないどころか不幸のもととなって。


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